不動産の(生前)贈与
最近、相続のご相談と比例するように、不動産の贈与についてのご相談も増えてきていますので、今回は、不動産の(生前)贈与について書いてみたいと思います。
はじめに、「贈与」の意味を確認しますと、
贈与とは、自分の財産を無償(ただ)で譲るという意思表示をして、相手方もこれを承諾した時に成立する契約の一つになります。
なお、贈与のご相談の中でも、お子さんから、相続の場合と比較しながらお尋ねされることが多く、また税金の面でも贈与税と相続税で比較して検討されることが多いため、今回のタイトルでは「贈与」の前に区別する意味も込めて「(生前)」と入れさせていただきました。
今回は、お子さんや配偶者など、お亡くなりになった場合に相続人になる方(推定相続人)への不動産の贈与について、相続の場合と比較しながら、必要な費用などについてご説明していきたいと思います。
なお、財産が多くあり節税のための生前贈与などもあるかと思いますが、今回は、財産がご自宅+預貯金というような一般的なご家庭を想定してご説明していきます。
さて、贈与は無償(ただ)で名義を変えるものでもありますし、簡単に名義変更ができそうに思ってしまいますが、ここで考えないといけないのが税金です。
不動産を贈与する場合にかかる税金は次のとおりです。
①贈与税
②登録免許税
③不動産取得税
①贈与税について
贈与税とは、個人から財産をもらったときにかかる税金です。
基本的に、贈与税は、1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。つまり、基礎控除額は110万円しかありませんので、不動産の場合は、ほとんど贈与税がかかってくることになります。そして、その税率は最高でなんと55%にもなります。※控除額があります。
参照 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
(不動産を贈与する場合は、上記のとおり贈与税が高額となることが多いため、各種制度を利用されることが多くあります。詳細は下記「不動産を贈与する場合に利用される代表的な制度」をご参照ください。)
一方で、相続の場合にかかってくるのは「相続税」です。
相続税は、相続財産から(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を基礎控除として差し引くことができますので、相続財産が基礎控除額以下でしたら相続税がかかりません。
参照 相続税の計算(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
②登録免許税について
登記を申請する場合には、法務局へ登録免許税という税金を納めなければなりません。
贈与の場合の登録免許税は不動産の評価額の2%である一方、相続の場合は0.4%になりますので、贈与の場合は相続の場合の5倍の金額となります。
③不動産取得税について
不動産取得税は、不動産の取得に対して、その不動産の取得者に課税される税金です。贈与による取
得の場合には課税されます。
参照 不動産取得税(熊本県)
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/16/50514.html
一方、相続の場合には不動産取得税は課税されません。
以上のとおり、費用の面で考えると、相続よりも贈与の方が負担が大きくなることが多くあるため、贈与のご相談をお受けしたとしても、実際に贈与を進められる方は一部というのが現状です。
もちろん、税金についてもご理解されたうえで贈与を希望される場合には、喜んで登記手続きのサポートをさせていただきます。
が、
・贈与を検討される目的が将来的に相続人間でもめないように、ということでしたら、
遺言書を検討されてもいいかもしれません。
・認知症対策などの観点から贈与を考えていらっしゃるなら、任意後見や家族信託などを検討されてもいいかもしれません。
将来に対してなんらかご不安があるようでしたら、一緒に考え、お力になれましたら嬉しいです。
不動産の贈与、その他気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
なお、記載している税金は、投稿日現在の法律を参考にしています。
また、具体的な税金額などについてのご相談はお受けできませんので、税金の詳細につきましては、税理士又は税務署へご相談・ご確認をお願いいたします。
【不動産を贈与する場合に利用される代表的な制度】
■相続時精算課税制度
60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫へ贈与を行う場合に検討
参照 相続時精算課税の選択(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
■配偶者控除
夫婦間で贈与を行う場合に検討
参照 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(国税庁)